二条城二の丸御殿

―二条城二の丸御殿―
にじょうじょうにのまるごてん

京都府京都市
国宝 1952年指定


 関ヶ原の戦いに勝利した徳川家康は、その翌年の慶長6年(1601年)に上洛時の居城として二条城の築城を命じた。慶長8年(1603年)に完成した二条城では征夷大将軍に就いた家康の「祝賀の儀」が執り行われ、また慶長16年(1611年)には家康と徳川秀頼(とくがわひでより)の会見が行われ、それが豊臣宗家滅亡の「大坂の陣」へと繋がった。そして幕末の慶応3年(1867年)には徳川慶喜(とくがわよしのぶ)による大政奉還が行われており、いわば二条城は江戸時代が始まり、その終焉を告げた地である。その二の丸には、今もなお築城当時の御殿が現存しており、それは華やかな桃山様式書院造の代表例かつ傑作として、また唯一完存する大規模城郭御殿として国宝に指定されている。




南西方向から見る二条城二の丸御殿外観
左から大広間、式台、遠侍が雁木状に接続されている

 室町時代に武家住宅として原型が作られた書院造は、安土桃山時代に発展し、江戸時代の初めにその完成を見た。書院造は生活の場と客間を明確に分け、そのうち客間には床の間や違い棚、付書院(つけしょいん)などの座敷飾りを備えるのが特徴であり、現代の日本住宅にも多大なる影響を与えた建築様式である。二条城二の丸御殿は本願寺の書院と共に、その書院造の完成系として知られている。車寄(くるまよせ)が付く遠侍(とおざむらい)、式台(しきだい)、大広間、蘇鉄(そてつ)の間 黒書院(小広間)、白書院(御座の間)の計六棟が雁木状(ジグザグ)に配される二の丸御殿は、総床面積が3300平方メートル、全部で33ある部屋には800枚もの畳が敷かれているという。




車寄の入口上部に見られる欄間彫刻
表側は五羽の鸞(らん)、裏側は松の大木が彫られている

 二条城二の丸御殿の外観を特徴付けているのは、何と言っても遠侍と式台の屋根であろう。唐門を通って二の丸の敷地に入ると、荘厳華麗な妻飾を持つそれらの破風が目に入る。特に車寄は装飾著しく、表と裏とでデザインが異なる欄間彫刻など、訪問者に対し幕府の偉容を知らしめるに十分な意匠を見せている。車寄から内部に入るとまず遠侍に出るが、これは将軍に謁見する大名の控え室である。遠侍に続いて老中と挨拶を交わす式台があり、そして大広間へ続いている。廊下は歩くと音が鳴る鶯張りであり、侵入者があれば知ることができる。廊下の天井は格天井とし、それぞれの格子には絵が描かれているが、これは皇室の離宮となった明治時代のものである。




大広間越しに見る黒書院
左には庭園に植えられた蘇鉄が見える(冬季の為「こも」が巻かれている)

 大広間は将軍が外様大名と謁見する場所であり、二の丸御殿の中で最も格式の高い部屋である。その重要性は折上格天井(格子天井を一段持ち上げた形の天井)にも見ることができる。将軍が座る一の間は特に高い格を有し、さらにもう一重天井を持ち上げた二重折上格天井だ。違い棚や床の間、付書院が備わるのはもちろんの事、脇には帳台構(ちょうだいがまえ)が設けられている。帳台構の裏には将軍護衛の武士が詰める武者隠しの間が存在し、いざという時の為に備えていた。なお、この大広間からはさらに蘇鉄の間へと続く。二の丸御殿の西側に広がる庭園には蘇鉄が植えられており、蘇鉄の間という部屋の名は、その蘇鉄が良く見える事から付けられたという。




西側から見る白書院
左奥に見える屋根は白書院のものだ

 蘇鉄の間を過ぎるとそこは黒書院である。黒書院は将軍が親藩大名や譜代大名と対面した場所であり、大広間より小さいことから小広間とも呼ばれている。しかし小さいながらも狩野探幽(かのうたんゆう)の弟である狩野尚信(かのうなおのぶ)の金碧障壁画(金箔地の上に描かれた障壁画)で飾られているなど、装飾はより巧みである。これらの障壁画は第三代将軍徳川家光の時代において、後水尾天皇の行幸を迎えるべく二条城を改修した際、探幽を始めとする狩野派一門に描かせたもので、その枚数は二の丸御殿全体で3000面以上にも及んでいる。これらの障壁画は城郭御殿と一体に残るものとしては現存唯一であり、そのうち954面が重要文化財に指定されている。




白書院外観
かつては白書院と黒書院を繋ぐ廊下から本丸への廊下が分岐していた

 黒書院の先、御殿の一番奥まった位置にある白書院は、将軍の居間兼寝室として使われていた私室である。その障壁画は金箔を張らない水墨山水画であり、より落ち着いた居住空間らしい部屋となっている。また、かつては黒書院と白書院を接続する廊下から西へ通路が伸び、本丸の櫓門へと繋がる廊下橋が存在した。往時は二の丸御殿内から廊下橋を経て、外に出る事なく直接本丸へ行けたのである。それらは明治時代に撤去されており、現在は本丸入口に建つ櫓門だけがその名残を見せている。また二の丸御殿の北側には、将軍の食事を調理した御清所と盛り付けや配膳を行っていた台所が御殿とは独立して建ち、それらは今もなお御殿と共に現存している。

2008年02月訪問
2009年04月再訪問
2011年02月再訪問




【アクセス】

「京都駅」から京都市バス101系統、9系統、50系統「二条城前バス停」よりすぐ。

【拝観情報】

拝観料600円、拝観時間は8時45分〜17時
(拝観受付は16時まで、二の丸御殿の内部拝観は9時から)、
ただし、年末年始(12月26日〜1月4日)、
および毎年12月、1月、7月、8月の毎週火曜日(休日の場合は翌日)は休館

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