本願寺阿弥陀堂、本願寺御影堂

―本願寺阿弥陀堂―
ほんがんじあみだどう
国宝 2014年指定

―本願寺御影堂―
ほんがんじごえいどう
国宝 2014年指定

京都府京都市


 京都堀川六条に境内を構える龍谷山本願寺は、庶民の信仰を集め類稀なる隆盛を誇った浄土真宗本願寺派の本山である。その歴史は鎌倉時代の文久九年(1272年)、真宗の開祖である親鸞(しんらん)の娘、覚信尼(かくしんに)が親鸞の遺骨を東山大谷に改葬し霊廟を建てたことに始まる。一大勢力となった本願寺は既存仏教勢力や戦国大名と対立し各地を点々とするが、桃山時代の天正19年(1591年)に豊臣秀吉から現在の寺域を与えられ伽藍が整えられた。桃山時代の建物が数多く残る本願寺において、伽藍の中枢を担う阿弥陀堂と御影堂は江戸時代の建立であるものの、いずれも真宗本堂の完成形として最大規模を誇り、また全国に分布する真宗本堂の規範でもある。




阿弥陀堂の広縁部

 阿弥陀堂と御影堂は境内の中央東寄りに、南北に並んで建っている。元和三年(1617年)、本願寺は火災に見舞われ堂宇を焼失したが、翌年には阿弥陀堂が再建され、少し後の寛永十三年(1636年)には御影堂が再建されている。現在の御影堂はこの時のものだ。江戸時代中期には親鸞五百回大遠忌に向けて阿弥陀堂の建て替えが行われ、現在の阿弥陀堂が宝暦十年(1760年)に竣工した。なお、建て替えられる前の旧阿弥陀堂は本願寺西山別院に移築され、その本堂として現存する。阿弥陀堂の規模は桁行45.2メートルに梁間42.1メートル、御影堂の規模は桁行62.1メートルに梁間48.3メートルといずれも非常に巨大なものだ。




御影堂の広縁部の組物
これら二棟は良く似ているが、組物など細部が異なる

 本願寺御影堂はより多くの門徒を収容できるよう巨大化した真宗仏堂の到達点である。その建物は亀腹基壇の上に建ち、屋根は本瓦葺きの入母屋造、軒は二軒繁垂木で支輪を回す。側面の妻飾は二重虹梁大瓶束であり、蟇股および菊や波をあしらった透かし彫りで飾っている。主体部の平面は桁行十五間、梁間十二間。そのうち手前八間を外陣部とし、奥側三間を内陣部とする。外陣部の周囲には二間幅の広縁と、擬宝珠高欄付きの落縁を回し、正面には三間幅の向拝を付して木階(きざはし)六級を設ける。主体部の柱は上下をすぼめた粽(ちまき)付きの円柱、広縁に立つ側柱は粽付きの唐戸面取角柱だ。また落縁の外側には、面取角柱の軒支柱が石製礎板の上に立つ。




阿弥陀堂は三手先の組物が印象的だ

 主体部の組物は拳鼻(こぶしばな)実肘木(さねひじき)の付いた出組を乗せ、中備は蟇股と蓑束であるが、墨の間には邪鬼が乗る。内陣部と外陣部の境には彫刻欄間がはめられ、柱や長押もろとも金箔で彩られている。内陣部の中央三間は内陣であり、高く上げた床には漆が塗られ、その中央には一間幅の来迎壁を立てた須弥壇を設けて親鸞の木像を納めた厨子を祀る。内陣の天井は格の高い折上格天井であり、彩色や金箔を用いて荘厳な信仰空間を作り出している。内陣の左右三間は余間とし、そのさらに外側には三ノ間、飛檐(ひえん)の間、鞘ノ間の三室を、それぞれ左右対称に並べている。なお、余間と三ノ間は小組格天井とするが、飛檐の間と鞘ノ間は根太天井である。




彫刻と繰型で飾られた向拝部

 本願寺の本堂にあたる阿弥陀堂は、桁行九間、梁間九間の平面を持つ。そのうち手前六間を外陣部とし、奥側三間を内陣部とする。ほとんど御影堂と同じ構造であるが、内陣部は阿弥陀如来像を安置する内陣を中心とし、その左右に余間、三ノ間、狭屋ノ間をそれぞれ並べる、より一般的な真宗本堂の構成となっている。主体部の組物は外側が拳鼻実肘木および二十尾垂木の三手先で、内側は拳鼻実肘木の出組とする。それら軸部や組物、海老虹梁などには技巧を凝らした絵様繰型を見ることができ、架構も江戸時代に発達した手法が用いられている。阿弥陀堂は御影堂より小規模ながらも、より成熟した技術・意匠で建てられており、真宗本堂の完成形というべき様相を呈している。




阿弥陀堂と御影堂は二本の廊下で接続される

 阿弥陀堂と御影堂は「渡り廊下」および「喚鐘廊下」で接続されており、これら二本の廊下もまた阿弥陀堂の附けたりとして国宝である。そのうち外陣部の広縁を結ぶ「渡り廊下」は門徒のための廊下であり、その規模は梁間が一間で5.4メートル、桁行は八間で24.2メートル。屋根は本瓦葺きの唐破風造で、軒は二軒繁垂木である。内陣部と外陣部の境を繋ぐ「喚鐘廊下」は僧侶のための廊下であり、梁間は一間で2.8メートル、桁行は十一間で26.4メートルだ。屋根は本瓦葺きの招造で、軒は木舞打ちの二軒疎垂木とする。その西面は土壁で閉じ、東面は腰のみを土壁とし上部を開放している。中央の一間は張り出しており、そこには僧侶が招集や儀式開始を告げる為の喚鐘が吊られている。

2010年04月訪問
2010年12月再訪問
2011年01月再訪問




【アクセス】

「京都駅」より徒歩約15分。
「京都駅」より京都市バス9系統、28系統、75系統などで約3分「西本願寺前バス停」下車すぐ。

【拝観情報】

拝観自由。

開門時間は11月〜2月は5時30分〜17時、3月〜4月は5時30分〜17時30分、5月〜8月は5時30分〜18時、9月〜10月は5時30分〜17時。

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