聖地キャンディ

聖地キャンディ

概要
保有国 スリランカ民主社会主義共和国
記載年 1991年
該当登録基準 (4)(6)−文化遺産
構成資産 仏歯寺、王宮建造物群、市内の歴史的建造物群
 紀元前4世紀にアヌラーダプラで興ったシンハラ王朝は、 ことあるごとに南インド王朝からの攻撃を受け首都を落とされていた。 その度に首都を奪還し王朝を保っていたが、 10世紀ついにシンハラ王朝アヌラーダプラを捨て、 ポロンナルワに遷都する。 しかしそれからも南インドからの攻撃は止まず、 シンハラ王朝はダンバデニヤ、ヤーパフワ、クルネーガラ、ガンポラ、 コッーテといった町に度々遷都を繰り返していく。 1474年、その混乱の時代を経てシンハラ王朝が行き着いた先が、キャンディであった。

 しかし、そのキャンディも安寧の日は来ない。 16世紀に入るとポルトガルがセイロン島にやってきて、植民地支配を開始する。 ポルトガルはコッーテを征服、キャンディにも攻めてくるがそれは失敗に終わった。 その後オランダがポルトガルを追い出し、 キャンディ王朝はオランダの仏教保護政策のもと繁栄を極めるが、 王朝とオランダは香辛料貿易を巡って対立、イギリスの協力を得てオランダを追放した。 しかし、イギリスは王朝に対して強硬な姿勢を取り関係は悪化。 1815年、内乱に乗じてキャンディ王朝は滅ぼされ、 シンハラ人王朝2000年の歴史が幕を閉じた。

 しかしながら、今もキャンディには、 スリランカの仏教徒にとって最も大事なものが存在する。 それは、仏歯である。仏歯とは、ブッダの犬歯のことだ。 火葬されたブッダの骨は各地へと分骨されたが、 そのうちの犬歯が紀元前4世紀にスリランカへ運ばれ アヌラーダプラに納められた。 仏歯は人々の信仰を集め、またそれは王権の象徴でもあった。 王朝が遷都するたびに仏歯も運ばれ、そして現在、 キャンディに遷都された際に運ばれた仏歯が、 今もなおこの地の仏歯寺に納められており、人々から最大限の信仰を集めている。 それが、キャンディが聖地たるゆえんである。

 キャンディの町は、19世紀初頭に作られた人造湖の湖畔に広がっている。 緑深い山を背後に仏歯寺や王宮群が立ち、その前に町並みが建ち並ぶ。 コロニアル建築や独特の瓦屋根の家、教会やモスクなどの歴史的建造物が混在し、 煩雑とした印象ながらもユニークな町並みが残るその町は、 仏歯寺や王宮群と共に世界遺産のコアゾーンに指定されている。

 年に一度、7月から8月に行われるペラヘラ祭では、 仏歯寺から仏歯を出し、象に乗せてキャンディの町を行進する。 100頭もの象や、キャンディアンダンスを踊る人々から成るこの行列は、 極めて壮大華美なスリランカ最大の祭りである。

旅行情報
所在地 キャンディ
アクセス コロンボより鉄道で3時間半
コロンボよりバスで3時間
アヌラーダプラよりバスで3時間半
必要見学時間 1日〜2日
 キャンディといえば仏歯寺だ。 仏歯寺はスリランカを代表する寺院であり、最大の聖地。 キャンディにきたのなら、仏歯寺へお参りすることを強くオススメする。 仏歯寺の建造物は16世紀に建てられたもので、 仏歯を祀る堂の前には真剣に祈りを捧げる人々の姿がある。 なお、仏歯寺は1998年のスリランカ独立50周年式典の日、 タミル人の過激派により爆弾テロが起き、外国人観光客を含め多数の人々が死傷した。 それ以来警備が強化され、仏歯寺に入るには何回かのボディチェックを受ける必要がある。

 仏歯寺の周辺にはキャンディ王朝時代の王宮建造物が残っている。 仏歯寺近辺の王宮建築は博物館になっているものもいくつかあり、見学が可能である。 またキャンディ湖に浮かぶ島にはハーレムがあり、王宮と地下道で繋がっていた。 ハーレムを望む湖畔には現在警察の駐屯所があるが、これはかつての王妃の浴場だ。

 キャンディでは町並みもぜひ見ておきたい。 仏歯寺前から広がるメインロード、ダラダ・ウィーディヤには、 クイーンズホテルを初めとした植民地時代の歴史的建造物が建ち並んでいる。 ダラダ・ウィーディヤ以外の道は、一見するとただの町のようにも見えるが、 よくよく建物を見ていくと、古く歴史的価値のあるものが多いことが分かる。 歴史的な建造物であるかないかを見分けるのは簡単だ。 歴史的建造物には、入口付近にユネスコのマークが入ったプレートが掲げられている。

 キャンディでは、キャンディアンダンスという踊りが踊られている。 キャンディアンダンスとは、スリランカ中央部山地に伝わる宗教儀礼からくる踊りと、 シンハラ王朝の宮廷で踊られていた踊りを融合したもので、 優雅で華麗な女性の踊り、アクロバティクで力強い男性の踊りなど、 数多くの種類のダンスが織り込まれている。 ペラヘラ祭りなどの祝い事で踊られる他、 観光用にも毎晩キャンディ芸術協会などでショーが行われており、 気軽にキャンディアンダンスを楽しむことができる。

(2007年6月 訪問)

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